青い夏の、わすれもの。
お腹がいっぱいになり、うとうとしかけて来たところで、ブーブーブーブーとスマホの音が聞こえてきた。

私は、もしかして父からかも...と焦ってバッグをあさって取り出したけれども、私のスマホには誰からも連絡は来ていなかった。

ということは、犯人は朝吹くんのスマホだ。

私が朝吹くんの方を向くと、朝吹くんはスマホを耳に当て立ち上がった。

私は朝吹くんの顔をじっと見つめていた。

優しい目が戸惑って見えた。

銀縁の眼鏡の角度を変え、1番良く見える位置で口元を見つめた。

そしたら、分かってしまった...。

口の形で誰と話しているのか、

私にははっきりと分かった。

私はオモワズ目を伏せた。

瞳の奥がじわじわと熱を帯び、涙腺が震えていた。

そうしているうちに朝吹くんが戻ってきて、私に頭を下げた。


「深月さんごめん。ちょっと行ってくる。すぐ戻ってくるから待ってて」

「朝吹...くん...」


――行かないで。


心はそう呟いた。

私は見えなくなるまでその背を見つめていた。

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