青い夏の、わすれもの。
浴衣での参加が必須ということで、当日は学校にボランティアで気付けをしてくれる老舗呉服店の店員さんが5名やって来た。

女子はパートごとに順番で体育館内の更衣室に行って着付けをしてもらった。

木管、パーカス、金管の順だったのだけど、ひな壇最上位のトランペットとボーンは案の定最後に回された。

ギリギリまで身軽でいられたのは良かったけど、浴衣姿にあまり慣れないうちに練習が終わってしまい、不安なままバスに乗り込み、会場に向かうことになった。

そのバスの中でわたしはいつも通りさつまくんと相席することになった。

お互いパートで1人ずつ余るからこうなるんだけど、それがわたしにとっては好都合だった。

というのも、さつまくんとは気の知れた仲だし、そんなに緊張せずにいつも通り過ごせるから。

でも、今日はなんだか違う...。

このただならぬ緊張は演奏が間近に迫っていることだけが原因ではなくて、

わたし自身の決断によるものの影響も大きいと見た。

そんなわたしを見かねてか、さつまくんは話しかけて来た。

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