青い夏の、わすれもの。
そうこうしているうちに会場に着き、リハーサルもないから、あっという間に出番になった。


「澪!澪~!こっち向いて澪~っ」


入場の時に爽の声が聞こえた時は心底驚いた。

こんなところで堂々と声を張り上げられる爽は、やはりただ者ではないと思った。

そして、名前を呼ばれたわたしは顔から火が出るくらい恥ずかしくなり、顔が真っ赤なのがバレないようにうつむいているしかなかった。

そのうち、タクトが振り下ろされ、わたしは楽器に息を吹きこんだ。

幸いにも、ノリで乗り切れる曲ばかりだったし、大会ではないから、多少のミスは許されるともあって、わたしは幾分心が軽い状態で演奏することが出来た。

全員で臨める最後の大舞台の真ん中で、わたしは精一杯演奏した。

楽しむってことを若干忘れかけていて、演奏の終盤で思い出し、ジャズサウンドに体をゆらゆらさせているしかなかった。

それでどうにかこうにか色んなことを誤魔化しているうちに演奏は終わってしまった。

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