青い夏の、わすれもの。
「答え合わせ、するよ。返事が来たら...行く」

「そ。なら、それまではフリーってことだよな?」

「あ、うん。そう、だけど...」


わたしがそう言うと、さつまくんはお得意の薄笑いを浮かべた。


「ぼっち同士慰め合いってどう?」

「ぷふっ」


思わずわたしは吹き出してしまった。

ぼっち同士の慰め合い...。

かなりネガティブな響きだなぁ。

なんだか胸がシュンとなる。

けど、面白い。


「笑ってられるんだから、山本はソロ充なんだな」

「なわけないよ」


本当はわたしだって...

わたしだって、

恋人...ほしいよ。

わたしのことを1番に考えてくれて

わたしに優しく微笑みかけてくれて

わたしを一生大切にするって言ってくれる

そんな人に出逢いたい。

そして、同じ道を歩んで行きたい。

それが出来たらどれだけ幸せだろう?

きっとこの腕では抱え切れないほどの感情が生まれ、溢れてわたしの体内を循環し、幸せに満たしてくれるのだろう。


「山本」


ぼんやりとそんなことを考えていると、声をかけられた。


「行くの、行かないの?」


わたしは...


「行く。とりあえず」

「とりあえずってなんだよ?」

「いいから、早く行こ。わたしお腹空いた」

「ほんと、自由だな山本は」


背中越しにねちねち言われながらもわたしは下駄を鳴らした。

その音はさっきより何倍も明るく楽しそうで、隣のカラカラと鳴る音と重なって共鳴し、心地よい和音を奏でていた。

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