青い夏の、わすれもの。
わたしが立ち止まり、隣のさつまくんも足を止めた。

きっとさつまくんみたいな性格だったら、ストレートに想いを伝えられるんだろうな。

自分の気持ちに真っ直ぐに言えるんだろうな...。


「...何て送った?」


さつまくんがさらに斬り込んできた。

内容まで聞いてくるなんて...。

興味本位なのか、心配して聞いてくれてるのか、分からない。

分かんないな、男の子の気持ちは...。

自分の気持ちだって不明瞭だから、手探りで生きてるのに、

他人の気持ちは...

ましてや自分の好きな異性のことなんて、

分からない。

...っていうのはわたしだけかも。

今まで踏み込めなかったわたしだからそう感じるのかもしれない。


「大事な話があります。見たら返事下さい」


わたしはあんぐりと口を開けてしまった。

だって、まさにその通りだったんだもん。

どうして読めるの?

どうしていつもさつまくんはわたしの気持ちを知ってるの?

見透かされてるの?

分かりやすすぎるの?

ねぇ...

どうして?


わたしが顔を上げると、視線が交わった。

さつまくんの目は笑ってなかった。

ただただ透き通っていて美しかった。


「電話、しないと後悔する。山本がこのことを引きずって次に行けなくると...困る人がいる」

「困る人?」


わたしが首を捻ってもさつまくんは沈黙を貫いた。

きっとその答え合わせは、わたしが踏み出さなきゃしてもらえない。

なら...やっぱり...


進むしかない。
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