青い夏の、わすれもの。
わたしはスマホを取り出し、画面を開いた。


お願い。

出て。


わたしは祈るような思いで受話器マークをタップし、スマホを耳に押し当てた。


――ピロロピロロピロロピロン...


1回目...ダメ。



――ピロロピロロピロロピロン...


2回目もダメ。

3度目の正直は......


――ピロロピロロピロロ...


「もしもし、朝吹です」


出た。

スマホから風くんの声が聞こえる。

ずっと憧れていた人の声は地球上に吹くどんな風よりも優しくて爽やかだった。


「澪ちゃんだよね?今メッセージ見た。返事遅くなってごめん。今どこ?おれ、そっち行くよ」

「今は...虹の森ガラス工房ってところの前にいるよ。でも、ちょっとここじゃ騒がしいから人気の少ないところに移動したいんだけど...」

「でも、ひとまず迎えに行くよ。一緒に移動した方が良いと思うし」

「うん。じゃ、さっき言ったところで待ってる」

「うん。すぐ行くから、ごめん、もうちょっと待ってて」

< 285 / 370 >

この作品をシェア

pagetop