青い夏の、わすれもの。
わたしはファンデーションがべったりと着いた画面をぼんやりと見つめた。

いよいよ...終わるんだ。

なんか、実感湧かないなぁ。

5年も想っていたのに、

結局何も出来なかった。

後悔しか...ないよ...。

どうしよう...

伝える前から泣きたくなってきた。

まだ我慢しないと。

涙取っておかないと。

どうせ泣くんだから。

まだだよ。

まだ、なんだよ...。

待ってよ、わたし...。


「何て顔してんだよ」


さつまくんがわたしの頬をつねった。


「痛いよ...」

「そんな顔してたら、言いたいことも言えない」

「でも、わたし笑って伝えられる自信ないよ。平常心でいる自信もない。もう...もうずっと泣いてるしか...」

「泣いてもいいから、言いたいことははっきり言う。
じゃなきゃ、なんで今日があるのかも、なんで電話したのかも、なんで今まで待ってたのかも、すべてのことに理由がなくなる。
朝吹風をこんなにも想っていたのに、その理由もその証拠も不明瞭になる。
山本はそれでいいのか?」


わたしは...首を真横に振った。

いいわけない。

そんなの、いいわけない。

わたしはちゃんと風くんを想ってた。

風くんのことを考えていた。

勇気がなくて遠くから見守ることしか出来なかったけど、

それでもこの胸はいつだって、確かに暖かかった。

だから、この気持ちはきちんと終わらせなければならないんだ。

今までのわたしを裏切らないためにも、

今ここにいるわたしが、わたしの言葉で終止符を打たなきゃならないんだ。


「さつまくん...わたし、頑張る。何度も迷ったけど、頑張るしかないって思えた。わたし、伝えてくる」


さつまくんはわたしの瞳を真っ直ぐ見つめて大きく首を縦に振った。


「んじゃ、思いきって行ってこい。山本なら、出来る。大丈夫だ」

「うん...ありがとう」

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