青い夏の、わすれもの。
生ぬるい風が肌を撫でる。

汗ばんだ下着をさらに湿っぽくする。

この気持ち悪さを拭ってくれる爽やかな風はもうわたしには吹かない。

その事実をわたしはとくと受け止めるためにここに来た。

この道を選択した。

わたしは風くんの呼吸が落ち着くのを見計らいながら大きく深呼吸を1つした。

覚悟は出来た。

わたしの想いを、

今紡ぐ。


「話っていうのはね...わたしのここにある感情のことなんだ」


わたしは自分の心に手を当てた。

風くんは優しい眼差しで、

わたしを、わたしだけを、見ていた。


「わたしはずっとこの想いを口にしようかどうか迷ってた。
自分が傷つくのが怖くて、自分以外の誰かを傷つけるのが怖くてずっとずっと逃げてた。答えを出すのを先延ばしにしてた。
そしたら、今になった。

わたしは自分が言葉にしなかったせいで自分自身を傷つけることになってしまった。

だけど、もう...もうそれも嫌。わたしは自分の心を蔑ろにして、嘘ついて生きて行きたくない。
だから、今から伝えようと思う」


わたしは1歩風くんに近づくと、わたしより定規1本分くらい背の高い彼を見上げるようにして、その顔を見つめた。

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