青い夏の、わすれもの。
わたしはその声に振り返ることなく全速力で人混みに飛び込んでいった。

人に紛れていればこの空っぽの心にも何かしら感情が生まれると思った。

けど、しばらく歩いてみてわたしはようやく心と体が繋がり、感覚が戻ってきた。

すると、突然河川が氾濫し、濁流がマンホールを突き破って溢れた。


「ぐすっぐすっ...あっ...あはっ...あははっ...」


袖で涙を拭い、わたしは笑いながら泣いていた。

時間差攻撃とは厄介だなぁ。

というより、わたしが感じることを拒んでいただけなのかもしれない。

強がっていただけなのかもしれない。

最後の最後まで、わたしは風くんに本当のわたしを見せることが出来なかった。

それはきっと最初から諦めていたから。

歩んできた道のりも、

これから歩んで行く世界も、

わたしとは違う、

雲泥の差があるって思っていたからなんだ。

わたしは深月さんに負けたんじゃない。

自分に負けたんだ。

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