青い夏の、わすれもの。
「こんなところで何してる?」


その声にわたしは振り返った。

1人では抱えきれなくて、

この声が聞こえてくるのを、

この声の主がわたしを見つけてくれるのを、

待ってたんだ。

さつまくんはわたしの腕を掴むと、バスが待っているであろう駐車場へと向かい歩き出した。


「やっぱ泣いたな」

「ぐすっ...泣くよ。だって失恋したんだもん」

「自ら失恋しに行くってなかなかの根性だな。さすが、山本澪だ」

「そんなこと誉められたって嬉しくない」


わたしがぐずぐず泣いているのなんかお構い無しにさつまくんは前へ前へと進んでいく。

本当に迷いがない。

いつだって正しい道を選び、確かに地に足つけて歩いてる。

さつまくんはやっぱすごいや。

さすが吹部エースだ。

< 292 / 370 >

この作品をシェア

pagetop