青い夏の、わすれもの。

そして、その日はやって来た。

あたしが駅に到着した時には既に深月さんは来ていた。

その服装は清楚なパステルピンクのブラウスに白のロングスカートという無難に可愛い服装だった。

あたしはそんなに悪いと思わないけどなぁ。

もっと深月さんに自信を持ってもらえるように、あたしが深月さんの魅力をこの減らず口で伝えるんだ。

そのためにこの口はあり、

今日あたしはここに足を運んだのだ。

さぁ、行くぞ！


あたしは深月さんに突進して行った。


「お～い、深月さ～ん！」

「あ、永瀬さん。すみません、わざわざ来てもらっちゃって」

「いえいえ～。それよりも～...カップル成立おめでと～！
いやぁ、一時はどうなることかと思ったけど収まるところに収まったって感じかな？ん、良かった良かった」

「永瀬さんのお陰です。永瀬さんが水族館に行こうって誘ってくださらなかったらこんなにも早く風くんと距離を縮めることは出来ませんでした。
本当にありがとうございます」

「も～、そんな誉めないでよ～。あたしを調子に乗らせたら厄介なことになるよ～」

「厄介なこと？」

「そうそう。実はね...」


あたしは調子に乗ると金遣いが荒くなる。

欲しいと思ったものを片っ端から爆買いしていく。

あとは食欲も増進しちゃって、胃が底無し沼になって何時間でも食べ続ける。

とにかく一言で言うと厄介。

自分でも制御不能になって大変だから、調子に乗りすぎないようにしている。


「ってことだから気をつけて」

「はい。分かりました。以後気をつけます」

「うん。それでよろしい」


あたしと深月さんは顔を付き合わせて笑い合った。

深月さんの笑顔を見ていたらぽかぽかと胸の底の底からぽかぽかと熱を帯びてきた。

優しくてほの暖かい。

これが深月さんなんだ...。

あたしはこの時初めて深月さんに触れた気がした。

ようやく1歩、新しい世界へ踏み出せた気がした。

そこに深月さんが居てくれて良かったと思った。