青い夏の、わすれもの。
「あのぉ、永瀬さん。これ、着てみたんですけど...」


あたしはぼけっとしていて深月さんが試着室から出てきたのに気づかなかった。

慌てて視線を向けるとイメージ通りの生命体があたしの目の前に誕生していた。


「似合ってる!やっぱ身長高くて美脚な人にはパンツスタイルが似合うな。シャツを脱いだら肌見せになってキュンだし、この中のキャミも夜空みたいな色合いで綺麗!うん、これで行こう!」

「でも、デートなのにパンツって大丈夫ですかね?やはり王道のスカートにした方が...」

「あー、確かに。じゃあ、マーメイドスカートなんてどう?ほら、さっき見た...えっと確か...」


というのを4、5回繰り返し、ようやくトータルコーディネートが完成した。

深月さんは自分はオシャレに疎いって言ってたけど、色彩感覚が抜群に良いから、あとは流行のスタイルを押さえることさえ出来れば全然自分でも選べると思った。

恋する乙女の可能性は無限大。

誰かへの恋心がオシャレのスパイスになる。

女子を可愛く、綺麗にしてくれる。

それが、恋なんだ。

きっと、深月さんももっと美しくなる。

あたしには見えるよ。

純白なドレスを身に纏った深月さんが...。

なんて、気が早すぎだな。


あたしは妄想はそこそこにして自分用の洋服を物色し始めたのだった。

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