青い夏の、わすれもの。
「あの...」


声のした方を見ると、そこには見覚えのある男子が立っていた。


「朝吹くん」

「突然ごめん。今帰り?」

「うん。そうだけど、どうしたの?」


私に話しかけて来たのは同じクラスの朝吹風くんだった。

サッカー部エースで頭脳明晰。

文武両道を背負って生きてるような男の子だ。

それにしてもなぜこんなところにいるのだろう。

サッカー部の練習は外のはずだし、そもそももう引退したのでは?

なんて疑問を抱えた目で見ていると、朝吹くんが言った。


「今なんでここにいるの?とか思ってたでしょ?」

「あ、うん」


すごい。

私の思考、読めたんだ。


「来月の入試のことで先生と話してたんだ。そしたらこんな時間になっちゃった。でも、深月さんは偉いね。毎日この時間まで生徒会でしょ?」

「ううん。今日はたまたま。会長がお休みで代理の仕事をしてたから、いつもより遅いの」

「そっか。お疲れ様」


爽やかな風が吹き抜けた。

こんな雨も吹き飛ばしそうな、

嵐でも雷でもドンと来いって感じの

無敵な風を感じた。

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