青い夏の、わすれもの。
「俺、澪に言われたんだ。わたしは試合中応援出来ないけど、爽がいる。爽のために投げてほしい、って」

「え...」


澪、あたしのためにそんなことを...。

澪は不器用なんだから、自分の心配だけしていればいいのに。

なんて思いながらも、ほんとはすっごく嬉しいよ。

地球の裏側まで届くくらいおっきな声で叫びたいよ。

澪、心配かけちゃってごめん。

でも、ありがとう。
ありがと、澪...。

あたしはそう胸の中で呟いた。


「それと、爽のこと、ちゃんと見てあげてって言われた。幼なじみのこと、軽く見すぎだって叱られた」

「はは。澪がそんなこと...」


なんだ、意外にはっきり言えるじゃん。

だんだんあたしに似てきたのかもね。

友は共に似るって言うから。

な~んて、ね。

誰も言って無いんだけど。

でも、バカなあたしにしてはいいこと言ったよね?

自画自賛はイタイな。


「で、澪に言われて一晩考えてみた。爽がこの前オレに言った言葉を思い出しながら、爽のことだけ考えた」


なんだ、それ?

気味悪いわ。

...なんてのは、嘘。

あたしのことだけ考えてたなんて言われて嬉しくないわけないよ!

そこら中駆け回ったり飛び跳ねたりしたい気分だよ。

その一言だけでご飯3杯は余裕でペロリだよ。


あたしはニヤニヤを押さえきれず、ふふっと笑ったけど、魁は表情を強張らせたままだった。

フラれてあっけらかんとしてるのもどうかと思うけど、あんまりひきずるのも良くないと思う。


「ちょっと、大丈夫?」


からかうように魁の顔を覗き込んだ時...

時が止まった。

魁の瞳には...

星屑を溜め込んだ光の雫が浮かんでいた。

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