青い夏の、わすれもの。
「魁...?」

「...ごめん。ほんと、ごめん...」

「えっ?ちょっと何?なんで泣いてるの?意味不明なんだけど」


泣き出した魁の肩をぽんっと叩こうと手を伸ばそうとしたけど、軽々しく触れてはいけない気がしてあたしは手を引っ込めた。

その代わり、言葉を紡いだ。


「魁...魁が大変な時になんかあたし余計なこと言って混乱させちゃったみたいで、こっちこそ、ごめん。

でも、魁があたしのこと考えてくれたってのは本当に本当に嬉しかったし、なんかもう...それだけで十分。

魁があたしをどう思ってようとあたしは魁のこと、ずっと好きでいるから。

ほんと、バカみたいだけど、その自信だけは誰よりもある。

だから、さ...魁は魁らしく魁でいて。

これからもあたしの憧れで、ヒーローで、大好きな魁でいて。それがあたしの願いだよ」


お願い、神様。

あたしの願い事は後回しでいいから、

だからどうか、魁に幸せを。

魁に笑顔を。

あたしの幸せは...

魁の幸せ、だから。


あたしが心でそう願い事を捧げながら、魁を見つめた。

魁の顔は丸めた新聞紙みたいにぐしゃぐしゃだった。
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