青い夏の、わすれもの。
「あ、そうだ」


私が爽のことを考えていると、風くんが口を開いた。


「行きたい場所があるんだ。来年でもいいかなっても思ったんだけど、まだ咲いてるみたいだから夏が終わるまでには行きたいなって思って」


風くんが見せてくれたのは、一面が目を細めたくなるほどに眩しい向日葵畑の写真だった。


「すごく綺麗...。私毎年家族と近所の向日葵畑を観に行ってたんだけど、南伊豆にもこんなに良いところがあるなんて知らなかった」

「今年は向日葵迷路っていうのもやってるみたいなんだ。向日葵見ながら遊べるからいいんだよね。華どう?」

「うん。いい!行こう、明日」

「明日?」


風くんは驚いたみたいだけど、私は本気だった。

ちょっと弾丸かもしれないけど、夏しか出来ないことは夏やらなきゃ。

夏にわすれものをしたくない。

やりたいことはやる。

言いたいことは言う。

私は後悔しないように、自分の心に正直に生きると決めたんだ。

だから、行く。

行くんだ、どこへだって。

風くんとなら、行ける。


「ご両親は心配しない?」

「大丈夫。説得するから」

「華がそこまで言うなら...行こうか、明日」

「うん」


私は大きく頷いた。

明日はきっと、今まで迎えてきた明日よりもずっとずーっと眩しい。

そう、確信していた。

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