青い夏の、わすれもの。
私は映画を見終わると速攻でバスに乗り込んで20時に帰宅し、いつも通り両親と夕飯を囲んだ。

でも、私の心はいつもと違った。

夏の出会いにより、海のように大きく、虹のようにカラフルになった私の心は、ようやく私の心になった。

私の気持ちで、

私の想いで、

私の意思で、

真っ直ぐ突き進んでいく。

私は空の茶碗と箸を置き、仲睦まじく並んで食事をする両親に視線を向けた。


「お父さん、お母さん、話があるんだけど」

「ん?どうした?」

「何話って。志望校変えますとかそういうこと?」


私は首を振った。


「私、明日8時に家を出て南伊豆にある向日葵畑を見に行く。こっちに帰ってくるのは15時くらいで、そのままの足で吹奏楽部の定期演奏会にも行く。

明日は...明日はなんの日か忘れた訳じゃないの。
2人の結婚記念日だって分かってる。
毎年家族で祝ってきたから、今年も一緒にお祝いしたいと思ってる。

だけど...だけどね、今私がやりたいことを優先させてもらいたい。
この夏にわすれものをしたって言いたくないから。

明日も今日くらいの時間に帰ってくることになっちゃうけど、どうか許してください」


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