青い夏の、わすれもの。
「お2人さん、今日は午前中はどちらへ?」


爽がおばさんが井戸端会議の時に見せるようなニヤニヤ顔をして聞いてきた。


「南伊豆の向日葵畑だよ。この前行くってラインしたよ」

「いやぁ、実はねぇ、ついさっきまですっかり忘れてて」

「そうなんだよ。それで深月さんのことずっと探し回ってたんだ。そもそも俺は知らなかったから付き合わされてさぁ。深月さんがあと10分で着くってライン送ってくれなきゃ、炎天下の中探しに行くとこだったんだ」

「爽、人の話はちゃんと聞いてよ」

「は~い」


私と爽のやり取りを微笑ましそうに見ていた風くんが言った。


「混じり合わなさそうな2人が意外にも相性が良さそうで、なんか嬉しい。ほっとした」

「なにそれ、意味不明。風くんさぁ、華の親みたい」

「いや、カレシだから」

「うわ。何急に。ヒュ~ヒュ~」

「ちょっとぉ。うるさいよ、爽」


暴走し始めた爽を必死にたしなめる。

でも、それさえも新鮮で楽しい。

友達がいるって、

何でも言い合えるって、

良いな。

そういう関係になってくれる人が現れてくれて、本当に...本当に良かった。

私の世界、大きく広がった。

皆、出会ってくれて、ありがとう...。

私は密かに感謝しながら、愛しい目で彼らを見ていた。

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