青い夏の、わすれもの。
今日のところは居残り練習はしないで家に持ち帰って朝練しようと思い、わたしは音楽室を後にした。

廊下を歩きながら窓の外を見ていると、グランドの照明が点いていて、その光の中で練習している人を見つけた。

背が高く、肩幅もあってがっしりとした骨格。

そして、なんと言ってもあのユニフォーム姿...。

間違いない。

魁くんだ。

わたしはその姿を見て思い出した。

そういえば引退試合は定演の前日の29日だった。

わたしは魁くんに見に来てほしいとラインでメッセージをもらったけど、生憎リハーサルが1日中行われるから行くことは出来ない。

その代わり前日練習終わりに応援しにいくと言った。

なんてことをしておきながら、わたしは深いため息をついた。

このままこんな中途半端なことばかりしていて良いのか。

返事を先延ばしにしても良いことなんて1つもないのに、花火大会から1週間がたった今もまだ言えずにいる。


「ダメだな、わたし...」


誰か話、聞いてくれないかな...。

そう思った時に真っ先に脳裏に浮かんできたのは、さつまくんの顔だった。

そういえば姿が見えない気がする。

バスが一緒だからバス停まで歩くか、どちらかが先に帰るときは声をかけていくはずなのに...。
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