青い夏の、わすれもの。
わたしの胸は急にぎゅうっと締め付けられて呼吸が苦しくなった。

話を聞いてほしい時にたまたまいないからってこんな気持ちになるなんて...。

わたし、ズルいな。

わがまま、だな。

甘えてるな。

さつまくんを頼りにし過ぎてる。

さすがにもうあと5日で引退なんだし、頼るの止めないと。


そっか...あと5日か。

5日で終わっちゃうんだ...。

そしたら、さつまくんとも話さなくなるのかな。

同じクラスにいても部活以外ではそんなに話して来なかったんだから、きっと話さなくなる。

話さなくなる、のか...。


さつまくんとの会話がない世界を想像してみる。

なんだか味気ない。

それに...すごく寂しい。

胸の中で鳴り響いていた音楽が段々とデクレッシェンドしていく感じがする。

想像の世界で音がなくなると現実の世界でも胸の鼓動は気持ちが悪いくらいに静まり返った。

その隙間に入り込むように音が聞こえてくる。

わたしは早足でその場所に向かった。

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