青い夏の、わすれもの。
「律くん...」


どうしてここにいるの?

その子は誰?

彼女じゃないよね?

まるで津波のように疑問と不安が胸に押し寄せてきた。

このままじゃ飲み込まれる...。

どうしよう...。


「その傘...」


女の子の方が傘を見つめる。


「風くんのと同じだ」


私は驚いて目を丸くした。

朝吹くんの傘を把握してる?

どうして?

もしかして、ストーカー?

...いや、違う。

この子はきっと...純粋に彼を想ってるだけだ。


「素敵な傘ですね」


女の子は私に微笑みかけてくれた。

見るからに素直そうな子。

高めに結ったポニーテールにつけた浅葱色のリボンの飾りがとても良く似合ってる。

目はぱっちり見開かれていて、くっきり二重まぶた。

唇は薄くスッとしている。

まさに美少女だ。

そんな美少女に選ばれた傘は空色で、このどんよりした空気を払ってくれそうなパワーを感じる。

私は見とれてしまった。


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