青い夏の、わすれもの。
3階の1番端の教室から灯りが漏れていた。

わたしはそっとドアの窓から中を見ると、ユーフォの秋穂ちゃんが顔を真っ赤にして一生懸命吹いている姿が目に入った。

ピッピッピッピッピッ...とチューナーのメトロノームが規則正しくリズムを刻む。

それに合わせて手拍子が鳴る。


「1と2と3と4と、はいっ」


どうやら裏拍の練習のよう。

確かに秋穂ちゃんは1年生の時から裏打ちが苦手だった。

ホルンやトロンボーンも担当することがあるんだけど、定演の曲ではユーフォが担当だった。

苦手を克服しようって思ってさつまくんにお願いしたのかな?

それともさつまくんが一緒に練習すると言ったのかな?

......なんてことはどうでもいっか。

わたしには関係ないよね?

関係ない。

そう、関係ない。

分かってるのに...

どうしてこんなに胸が締め付けられるのだろう?

どうしてこんなに胸が痛いんだろう?

どうしてこんなに気になってしまうのだろう?

ねぇ...どうして?


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