青い夏の、わすれもの。
「あの、そう言えばさっき、さつまくんに何か言いかけてましたよね?お話するなら、どうぞ」


彼女にはやはり聞こえていたらしい。

でも、"さつまくん"って何?

ニックネームで呼び合うほど仲が良いの?

どういう関係なの?

私の疑問が透けて見えたのか、彼女は直ぐ様話し出した。


「あ、すみません。さつまくんなんて言ったから分からないんですよね?

実は私、大楽(だいらく)くんのこと、最初"だいがく"って呼んでしまって。

だいがくといえば、大学いもじゃないですか?その原料ってさつまいもだから、それで...」

「そんなことイチイチ説明してどうする?」

「いや、だって...」


彼女を押し退け、律くんが私の前にやって来たる。

私はその麗しい切れ長の瞳に、ごくんと喉を鳴らしてしまった。


「オレに何か用ですか?」

「あ、いや、えっと...その...」


まごまごしていると、前方からオレンジ色の光が飛び込んできた。

ププーっとクラクションを鳴らして止まる。


「ひとまず乗りましょう」

「あっ、はい...」


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