青い夏の、わすれもの。
バスは雨だというのに意外にも空いていて、2人席に私とあの女の子が座り、その数メートル先に律くんは立っていた。


「あの...」


隣の彼女が話しかけてくる。

私はイヤホンをバッグにしまってから彼女に顔を向けた。


「はい。何でしょう?」

「あのぉ、さっきから思ってたのですが...生徒会副会長の深月華さんですか?」

「あ、はい。そうですが...」

「だと思いました。どこかで見たことのある顔だなぁと思ったら、やはりそうでしたか!近くで見るとますます綺麗に見えます。色白で羨ましいです」

「そうですか?」


彼女はぶんぶんと首を縦に振った。

外見を誉められたことなんてほぼないから、なんだか照れ臭い。

でも、誉められるって悪くない。

誉められて嫌な気分になる人はいないのだから、これからは少し髪を切っただけの女子も、たまにアイロンで巻いてくる女子も積極的に誉めようと思った。

そしたらもっと仲良くなれて...

友達になれるかもしれないし。

..."友達"か。

そう呼べる人は今の私にはいない。

少し感傷的な気持ちになった。


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