青い夏の、わすれもの。
「私は高校から始めたので最初は全然譜面が読めなかったんです。そんな私の練習にとことん付き合ってくれたのが、さつまくんで。今でもすごく感謝してます」


律くん、優しいんだ...。

私のイメージ通り。

優しい人って良い。

すごく良い。

母性本能をくすぐる甘え上手な男子が良いなんていう人もいるけど、私は守ってくれる王子様タイプが良いかもしれない。

生徒会副会長って肩書きがあると、常にしっかりしてなければならないから、気が抜けない。

だからこそ、帰ったら優しく迎え入れてくれる人がいい。

なんて妄想に羽を広げていると、どんどん脈が上がって心臓がバクバクしてくる。


「実は私ちょっとスランプで...。大会まで2週間しかないから、このままだとかなりまずいんです。それでさっきさつまくんに特別レッスンをお願いしていたんです」

「そうだったんですか...」

「はい。それでアイスを奢るから朝練付き合ってほしいって言ったんです。でも渋ってるんですよね...」

「でも、律くんは優しいんですよね?」

「まぁ、基本的には」

「だったらきっと引き受けてくれますよ。朝からお2人の演奏が聞けるなんて嬉しい限りです。ぜひ練習して下さい!」


私がそう力強く言うと、山本さんは首もとを押さえて笑った。


「あはは。そこまで言われちゃうと、さつまくんも引き下がれませんね、きっと。あとで深月さんがさつまくんの演奏を聴きたがってるって言っておきます」

「引き受けてくれると良いですね」

「はい」


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