青い夏の、わすれもの。
「ありがとう」


律くんは一言そう言って花束を受け取ってくれた。

それだけでもう死んでもいいって思えるくらい嬉しくて涙は引っ込み、笑顔が溢れた。


「私、律くんの音大好きなんです!素敵な音がホール中に響き渡るのを楽しみにしてます!」

「うん。全力を尽くすよ。じゃ、オレそろそろ行くね」


律くんはそれだけ言ってスマートに去っていった。

目に穴が空きそうなくらいじっくりとその姿を焼き付け、私も舞台裏を後にした。

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