青い夏の、わすれもの。
魁は澪を真っ直ぐ見つめて言った。


「ごめんなんて言うなよ」

「えっ?」

「一生懸命応援してくれてるって分かってたから。準優勝でもここまで来られたのは...澪のお陰だから」


澪がぽかんと口を開ける。

魁が一歩前に歩み出る。


「俺...ずっと...ずっと前から澪が好きでした!俺と付き合って下さい!」


...あ。

言ってしまった。

......バカ。

......バカバカ。

......もぉ、

ほんと、バカだよ。

なんで...

なんで...澪なのかね?

"はい"って言ってくれる人がこんなに近くにいるってのに、

なんでそっち行くかね?

......やだなぁ。

分かってても、涙出てくる。

もう...我慢出来ないや。

あたしは両手で顔を覆い、息を殺した。


「あの、でもわたし...」

「返事は今すぐじゃなくていい。でも、死ぬ前にはもらいたいかな」


死ぬ前って何?

そんなに待ってもいいってこと?

ほんと、バッカじゃない?


でも、澪は突っ込まなかった。


「あっ...うん。分かった」


澪...言ってやってよ。

"好きな人いるからごめん"って言ってよ。

現実見せてやってよ。

期待させないでよ。

告白して舞い上がった顔とか、

逆に"言って良かったのかなぁ"って悩む顔とか、

見たくないんだよ。

それを一番近くで見たくもないのに見せられるのはあたしなんだよ。

家がご近所さんで、

同じクラスで、

同じ部活で、

幼なじみのあたしなんだよ。

あたし、なんだ、よ...。


< 7 / 370 >

この作品をシェア

pagetop