さよならセーラー服
「あれ、こんなとこでなにしてんの」
雑音に紛れて届いた声。私に向けられた言葉じゃないかも、というのは振り向いたあとに思ったけれど、どこか聞き覚えのあるその声の主は私を捉えていた。
「家こっちのほうだっけ?」
「いや、逆だけど……」
「あー、そうなんだ」
公園のベンチ。
深く腰かけた彼はテキトーに相槌を打つ。
平日の昼間の公園は静かで、その中に制服姿でベンチに座っている佐川はどこか異質で浮いているように見えるけど、私も他人のことは言えなさそうだ。
「まーとりあえず座れば?」
まさかこんなところでクラスメイトに遭遇するとは思わず固まっている私とは対照に、彼は平然と言い放って。
とんとん、と軽い音を立てたベンチ。促されるがまま人ひとり分のスペースを空けて座ったのは、これから特に行く当てがなかったからだ。
木陰とはいえ、夏は侮れないらしい。
スカートからじわじわと熱が伝わる。
「で? 優等生がこんな昼間に公園にいていいの?」
「そんなこと言ったら佐川だって」
横目でじとっと訴えれば、「たしかにね」と苦笑交じりに返された。