さよならセーラー服
第二希望、第三希望……と視線を下に移していく。それでも私が行きたい大学名はどこにも見当たらない。
「なんで書かねーの?」
「書いたよ、最初は」
進路希望用紙が配られて、迷うことなく提出したら放課後呼び出されて。
「勿体ない、ってさ」
意味がわからなかった。
紙を突き返されて、頭冷やせって言われて。
広瀬ならもっと上目指しても余裕だから。そんな生活できるかわからない職に就くより今の時代安定した職に就くのが一番なんだ。
──それくらい、広瀬なら理解できるだろ
要するにセンセーたちは学校の評判上げたいだけ。名門大学に受かった生徒を輩出!という世間一般的に見た素晴らしいことを掲げたいだけ。私はそんなことちっとも望んでないのに。私の進路は私が決めていいはずなのに。
「もういいんだけどね。諦めたから」
ははっと笑ってみるも、今の天気みたいにカラッとした感じになってしまった。
佐川を見る自信もなく、ローファーを見つめる。近くにあった小石が視界の端に映って、軽く蹴った。思いのほか小石は遠くまで飛ばなくて、なんだかもやもやした気分になる。
「嘘だ」
その言葉に、声に、はっと顔を上げた。
鋭い瞳に射抜かれて、息をするのも忘れそうだ。
「諦めてたらそんな悔しそうな顔しないでしょ」