愛される何でも屋と両想いになれる確率



事件が起こったのは、列車が出発してわずか十五分ほどのことだった。

俺は、この車両に怪しい人物がいないか席に座りながら見ていた。その時に見つけたのだ。やけに周りを警戒している男がいることに。

次の瞬間、男はいきなり立ち上がったと思うと懐から拳銃を取り出した。

「全員動くな!!抵抗したら殺すぞ!!」

何も知らない乗客は一瞬でパニックになり、顔を真っ青にする。俺と男との距離は離れている。立ち上がって近付くには時間がかかる。だが、それは好都合でもあるんだ。

俺の耳につけられているイヤホンから、トントンと一定の間隔で叩く音が聞こえてくる。他の捜査員からのモールス信号だ。どうやら、他の車両でも一斉に犯罪者が動き始めたらしい。俺もモールス信号を送っておく。

「全員、スマホを出せ!この袋に入れろ!」

男が乗客たち一人ひとりからスマホを奪い、袋に入れていく。そして男がビオラさんとアンドレさんのところへ来た時、男の目が変わった。

「へえ、いい女じゃねぇか」
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