この度、生意気御曹司の秘書になりました。
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「…そうだったんだ、大変だったね?」


あれからかなり時間があった私は、一旦家に帰って荷物の整理をしたあと、会社の前で待ち合わせしていた俊介と合流した。

俊介の優しい顔を見た瞬間、何だかホッとしてしまった私は、ペラペラと今日あったことを唇を尖らせながら話した。


「うん、ほんとに大変だよ…。これからあんな人と一緒に仕事しなきゃいけないなんて……」


先を思えば思うほど、不安に駆られる。大きなため息を抑えきれず漏らせば、俊介は急にそんな私を見て吹き出した。


「え?俊介?」


どこに笑いの沸点があったのか分からなくて戸惑っていると、俊介はごめんごめんと繰り返したあと、目尻に溜まった涙を人差し指で拭った。


「いや、どうしても想像出来なくてさ」

「な、何が…?」

「雪が誰かに言い返すところだよ。俺の前ではすごい大人しいし、怒ったところ見せたことないだろ?」

「た、確かに…」


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