この度、生意気御曹司の秘書になりました。


思い返してみれば、そうかもしれない。

私は俊介の目の前であまり負の感情を顕にしたことがない。……まぁそれは俊介があんな最低男とは違って、紳士で優しいからなんだろうけれど。


「…それにしても、なんだか妬けちゃうな」

「え?」

「ほら、俺の知らない雪の一面を立花さんは知ってるってことだろ?羨ましい」


私の顔を拗ねた表情で急に覗き込んできた俊介に思わず胸がキュンと鳴く。そんな自分を悟られたくなくて、隣を歩いていた俊介から少し距離をとろうとしたのだが……

そんな私に気づいた俊介は、そうさせまいと私の手のひらに指を絡めた。


「しゅ、俊介…っ?」

「こういう事、急にしたら怒るかなって思って」

「もう、俊介ってば!」


からかうような…だけどそれはまるで落ち込んでいる私を元気づけようとしてくれているような…そんな優しさも感じられて、私はふっと笑みを零した。

本当に俊介はすごい。会社であんなに嫌な気持ちになったのに、俊介と話せば一瞬で気分が晴れてしまう。いつの間にか笑顔になってしまう。明日も頑張ろうって思えてしまう。

俊介には本当に感謝してもしきれない。


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