この度、生意気御曹司の秘書になりました。
私は俊介の手を徐に強く握り返したあと、自分の方へ軽く引っ張った。そして、こちらに再び視線を向けた俊介にニコリと微笑む。
「俊介、ありがとう」
そんな私の声に驚いたように目を丸くした後、俊介はこくりと頷いた。そして次の瞬間、俊介に優しく引き寄せられる。
「雪のためなら俺はなんだってするよ」
耳元で囁くように紡がれた言葉に返すように、俊介の背中にゆっくりと手を回せば、強くなる俊介の腕。
あぁ、幸せだ………。
私は俊介の腕の中で目を瞑りながら、そっと呟いた。
「私も」
ーーーーと、そのとき。
俊介のカバンから着信が聞こえて、不意に体が離された。俊介が焦ったように鞄から携帯を取り出し、着信先を確認した矢先、あからさまに大きなため息をついた。