この度、生意気御曹司の秘書になりました。


「わ、私が社長の息子様の秘書を……ですか!?」

「あぁ、そうだ。君は高卒から働いてくれているから、この職場の事はだいぶ慣れているだろうし、秘書検定1級も持っているそうじゃないか」

「そ、それは……おっしゃる通りですが……」

「そういう事だ、君には今日から秘書として働いてもらうからね」


あまりの社長の強引さに断ることも出来ず、気づけば私は社長室を出されていた。

私は入社時から今日までの8年間、色々な部署にたらい回しにされてきた。そしてようやくずっと憧れていた総務部に去年配属され、仕事にもやっと慣れてきたところだったというのに。

あまりのショックにため息が漏れそうになった時、昨日俊介に買ってもらった結晶の指輪が薬指でキラリと光った。

……そうだ、私には俊介がいる。俊介のためにも、今は任された仕事をやり遂げないと駄目だよね。

私は拳を作り強く握りしめると、自分の太ももをきつく叩いた。


やるぞ、私!頑張れ私!


半ば強引ながらも気合いを入れ直した私は、自分の荷物をまとめるべく、急いで総務部へと足を動かしたのだった。


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