秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「離れたくないです」
「へぇ、そうなんだ」

マサトさんのふいに見せる蔑むような目線も口調も苦手だった。
本心をどこか隠しているようで、彼がなにを考えているのかわからない。笑っているようで笑っていない瞳も好きではなかった。


「そんなに愛されて、アイツも幸せだな」
「…」
「そんな怪訝な目で見んなよ。俺が今日お前を助けたのは偶然だけど、こうなるならわざわざマンション引っ越す必要なかったのかもなぁ」
「え?何を言って…」
「さぁ、記念撮影でもしようか」

彼の話すことが何一つ理解できず、硬直する。

ゆっくり瞬きをすると、同時に彼が携帯を取り出し、そして。

「っ」

勢いよく後頭部に手を回されて、叫ぶ間もなく私はキスをされていた。
反射的に顔を背けて背中を反らせる。

「なに、を…」
「あぁ、よかった。ちゃんと撮れてる」
「え…マサト、さん?」

不敵な笑みを浮かべる彼は携帯の画面を私に見せる。状況が理解できず小さく震える私に見せつけるようにそれを表示する。

たった今キスされた写真がそこには保存されていて言葉が出てこなかった。
< 132 / 215 >

この作品をシェア

pagetop