秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
どうするのが正解なのだろう。
どうすれば、私たちは笑い合えるのだろう。
マサトさんの要求通り彼に芸能界を辞めてもらうのがいいのだろうか。
そうしたら、一緒にいられる。

でも、それは彼の脅しに屈したことになる。悔しい。そんなことは許せない。
奥歯を噛みしめ、必死に解決策を考えるが何も浮かんでこなかった。
そもそもあんな写真を撮られてしまった私にも落ち度はある。
キスをしてしまった罪悪感も相まって、思考力が鈍る。

と。

ドアをノックする音が響く。
はい、と小さな声で言うと、すぐにそれが開き

「っ」
「こんにちは。拓海がいなくなったから収録が中止になったの。だから私もお見舞いに。大丈夫?」

アンナさんが顔を出す。体のラインを強調するような黒いワンピースは私が着たら下品に見えてしまいそうに見えるが彼女が着ると似合っているしかっこいい。
アンナさんとは拓海の家で会った時以来だ。

病院には相応しくない香りを纏って踵を鳴らす彼女は小さな紙袋を私に手渡す。

「どうぞ。これ、よかったら食べて。ケーキよ」
「…あ、ありがとうございます」

目の前まで来ると、遠慮なく先ほどまでマサトさんが座っていたパイプ椅子に腰かけ、足を組む。
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