秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「沙月?」
何度も彼女の名前を呼ぶが返ってこない。
それどころか物音ひとつしない。10日間仕事は休みをもらっているから今日も家にいるはずなのに。
焦って寝室のドアを開けるとベッドの上で眠っている彼女が視界に入り安堵の息を漏らした。
「よかった…沙月、」
まだ時刻は20時だ。眠りにつくには時間が早い。
沙月に近づいて、眠っている彼女の肩を揺らす。
眠っていると幼く見える彼女の瞼がゆっくりと開いた。そして、俺の名前を掠れたこえで呼ぶ。
「大丈夫?」
「…あ、うん。ごめんね、眠っていたみたい」
「それはいいんだよ。それよりも…ご飯は?食べた?」
「ううん、まだ」
体をゆっくりと起こしてベッドの縁に座る俺と目線を合わせる。
彼女の目元が赤いような気がして顔を近づけるとそれに反応するように彼女は背中を反らせて嫌がる。
「どうかしたの?沙月」
「ううん。何もないよ」
作ったような笑顔を張り付けて必死に口角を上げる沙月を見て思わず抱きしめていた。
「何か、あったんじゃないの」
静かに彼女の耳もとでそう囁く。