秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
彼と至近距離で見つめ合い、時が止まったかのようにお互いが動かない。

ようやく絞り出した声は震えていた。

「は、離して、」
「離して?じゃあ、その隠してるそれ、出せよ」
「…」

マサトさんは淡々とそう言った。バレていることを知り奥歯を噛みしめながらそれを震える手でパーカーのポケットから取り出すと彼に差し出した。

「へぇ、準備いいな」
「なんで…」
「そのくらい想定済みだって。俺のことなめないでくれる?」

すっと笑顔を消した彼に寒気がする。
彼の他人を蔑むような目が、あの顔が彼の本当の姿だと確信した。
怖がっていることを相手に伝わらないように平然を装うけど俳優相手にどこまでそれが通じるかわからない。

「男の家にのこのこ入ってきちゃ、ダメなこともわかんねーの?」
「っ」

マサトさんは濁った瞳で私を見つめ、そのまま乱暴にソファの上に私を押し倒す。抵抗することもできず、声も出せず、唇が戦慄く。

「私は拓海と別れたから」
「は?なにそれ。で、あいつは?辞めないってこと?」
「そうだよ。あなたは間違ってる。拓海が辞めたってあなたの位置は変わらない。そういう考え方大っ嫌い」
「お前自分の立場わかってんの?このままあの写真ばら撒いでもいいの?」
「いい。構わない。私は…拓海とは今後関わらないから」
「へぇ、そう。じゃあ俺が今ここでお前のこと抱いてもいいんだ?」
「…っ」


私の顔色が変わったのを確認してにやり、笑みを浮かべる。

頑張って涙を堪えようとするけど、恐怖でそれが出来ない。
涙がこめかみを伝っていく。

「泣く女抱く趣味はないから泣き止んでくれない?」
「…泣いて、ない」
「へぇ、そう」

シャツの中に侵入する手にもう無理だと諦めかけたその時、インターホンが鳴った。

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