秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「濡れ場は初めてなんだよ。演技すんの」
「…」
「現場じゃ緊張するし」
「…」
「ダメ?」
私は、真剣な彼の瞳に動揺しつつも悩んでいた。
もしかしたら拓海は別に大した意図はなく私に頼んでいるのではないだろうか。確かにラブストーリーが軸の映画などには出ているがもともとは”演技派俳優”として一気に人気になった。
アイドル枠じゃないからこそ、幅広く活動していた。
よく考えるとベッドシーンは今回が初めてなのは確かだ。
「わかった、やる」
「ありがとう」
珍しく口角をきゅっと上げて嬉しそうに笑う彼をみると私まで笑顔になる。
まぁ、演技だし、いいか。
台本には細かい指示が書かれていて拓海の字でさらに追加されている。
「じゃあ、ベッドの前に立って」
「うん」
まぁいいかとほんの少し前に思ったのに、ベッドの前に移動するとやっぱり不安が襲ってくる。拓海はあの”アンナ”さんとこのシーンを演じるのか…。
ドラマ観ようと思っていたけどやめようかな…なんて思っていると、
「ほら、早く」
「あ、ごめん」
拓海に急かされて私はセリフを確認した。