秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「ごめん。実はね…」

注意深く、私は話し始める。
涙はすでに止まっていた。拓海の温かい手のお陰かもしれない。彼の手はずっと私の両手を包み込むように添えられている。
マサトさんにキスをされてしまったこと、それを写真に撮られてしまったこと、アンナさんのこと、事務所のこと、そして…マサトさんの思惑を彼に伝える。

「なるほど」

冷静な声だったけど、怒気を孕んでいるのが伝わってくる。

そして、

「気づかなくてごめん。でも、俺は沙月のことが一番好きで大切だってことは言ってるでしょ?お願いだからさ、一人で抱え込まないで」
「…ごめん、なさい」

苦しそうに絞り出すようにそう言った彼に私も辛くなる。
悩んで決めたことなのに、結局は彼を傷つけてしまった。

ごめんなさいと再度伝える。

「二人で考えていこう。沙月が俺に芸能界を辞めてほしくないことはわかった。マサトの件は俺が何とかするし、もうばれちゃったからには何もしてこないとは思うけど…事務所に報告しておくから」
「…うん」
「あと、事務所が沙月と別れさせたいのもなんとなくはわかってたけど沙月が悩む必要はない」

拓海がゆっくりと私の顔を覗き込むように顔を傾けてきて

「っ」

声を出す間もなく触れるだけのキスをされた。

「俺は別れる気も離れる気もない。ようやく手に入ったのに、手放すと思う?」


< 151 / 215 >

この作品をシェア

pagetop