秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
拓海の朝は早いときも遅いときもある。
帰りも同様だ。一方で私はある程度一定だから彼と合わないことも多い。
それでもすれ違いなくやってるのは、彼の優しさとお互いの努力があるからだと思っている。

「あ、そろそろ行かないと」
「今日帰りは俺、早いよ。迎えに行こうか?」
「いいよ、いい!だってあんなところに拓海が現れたら大騒ぎだよ」
「帽子被るし」
「いいの!家で待ってて。できるだけタクシーで帰るようにするし」

7月に入った。
拓海の仕事は落ち着いてきたと思ったら最近は雑誌の撮影が入っていてこれもまた大変らしい。週の半分はジムで体を鍛えているしとてもハードそうに見える。
そのために真っ黒に髪を染めたらしいが、とんでもなく似合っていることは本人には照れくさくてなかなか言えない。

私も塾の仕事が忙しい時期に入ってきて、家でも仕事を持ち込んでやる日も多い。

「いってらっしゃい」
「行ってきます」

拓海に見送られて私は家を出た。
もうストーカーもいないし、私の傷も跡はあるもののよくなったし、あとはマサトさんもこのマンションから引っ越した。
最後、私に謝罪をしてきたけど許してはいない。

マサトさんの件は事務所に伝わって、結構なペナルティーがあったようだ。
私は詳しく知らないけど拓海はもう大丈夫と言っていたからそれを信じている。

彼の事務所の件はまだ片付いてはいない。
それに関してもすぐに答えを出すことはしないで、もう少し様子を見ようということになった。

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