秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
あれ、そういえば台本のセリフ合わせを手伝ってほしいのはセリフを覚えられないからと最初言っていた。でもさっきは…―

ベッドシーンが初めてだから手伝ってほしいと言っていた。どちらも本当なのかもしれないけど、今のこの場面にはほとんどセリフなどなかった。

彼が私のTシャツの中に手を入れてお腹を女性のようなしなやかな指で撫でる。意外にも彼の手が冷たくて余計にビクッと反応してしまう。

これは感じているのではない、絶対に違う。
そう自分に思い込ませて私は目を閉じる。

「っ…ちょっと…っ…!」

拓海の香りが鼻孔をくすぐり、首元に温かい感触が広がる。
薄目を開けると拓海が私の首筋に顔を埋めていて私は全力で首を横に振り彼から離れようと必死になる。

「拓海っ…!やっ…」
「だから、そんなセリフはないって」
「もう終わり、ダメっ…」
「嫌?」
「…」
「沙月は嫌なの?」

どこか切なそうなでも獲物を狙うような鋭い瞳が私を映し、キスしそうなほどの至近距離で囁く。
嫌だった?それは…―。

嫌ではない、ような気がする。でもわからない。
家族のような存在だった彼を急に男として見るなんて出来ないから。

「キスしてむちゃくちゃに抱きたい」
「…え…っと、え?それは、セリフですか?」
「まさか。俺の本音」

くすっと笑い、私の髪に指を通す。
なんて返したらいいのかわからずに私はパチパチと瞬きをすることしかできない。


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