秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
それは、昔のドラマの再放送で画面いっぱいに彼が映っているから思わず見入ってしまう。


「かっこいい…」

数年前のドラマだっけ。若い正義感あふれる刑事役で出演している。
今よりも少しだけ髪色が明るくて、でもやっぱりいつもの拓海で。

確かこのドラマに出てくるヒロインといい感じになるんじゃなかったっけ。
恋愛が軸ではないけどこういうドラマって、ちょっと恋愛も絡めてくるんだよなぁ。

昔はドキドキしながら見れていたけど、今はどうだろう。
キスシーンなんてあったらチャンネル変えちゃうかもしれない。大人げないし余裕ないよね、と思いながらそれを見ていた。

「沙月?」
「あ、拓海!みて、再放送してる」
「あー、本当だ」

エプロン姿のまま私に近づきテレビに視線を移すと嫌そうに顔をしかめる。

「この後、抱き合うシーンになるから消して」
「え、」

消して、そう言ったのに彼が先にリモコンを手にしてそれを消した。
呆然と彼を見上げていると困ったように眉尻を下げて言った。

「俺が逆なら嫌だから」
「…」
「他の男と抱き合ってたらめちゃくちゃムカつく。仕事でもね」
「…私はそんなことは、」
「少しは嫌じゃない?不安になったりしない?そういう思いはさせたくない」

真顔で拓海はそう言ってすぐにキッチンへ戻っていった。
大丈夫だよ、と彼の背中に向かって投げかけたが、届いているだろうか。
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