秘密に恋して～国民的スターから求愛されています～

と。

「沙月！」

雑踏を掻き分け、小走りで私のところまで来る彼はそのまま私の目の前まで来ると手を引いて走り出す。

「行こう」
「え、でも…―」
「女の子たちにばれちゃったね。しょうがない、今日はもう帰らないと」

たいしたことではない、とでも言うように私の手を引き走る彼に遅れないように私も走る。
さすがに走る拓海を追ってきた子はいないようだったが、車まで戻るときには私たちは汗だくで呼吸も乱れていた。

「大丈夫？」
「大丈夫だけど、拓海は？完全にバレちゃってたよね」
「そうだね。まぁ、そういうときもあるよ」
「いいの？！だって拓海は…」
「他の女優との嘘の熱愛報道はうんざりだけど沙月ならいいよ。だって本当だし」
「…」

すぐに車を動かして自宅へ向かう。

大丈夫だ、という彼に不安が消えないのは仕方がないことだろう。
だって、彼は芸能人だからだ。