秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
画面では中継ではないから一部切り取っての報道だったが拓海が記者たちから囲まれている様子が映し出される。


「すみません、つまり…報道された女性が本命でお付き合いされていると…?」
「そうです。アンナさんとの熱愛は全くの嘘です。付き合っていたこともありません。僕がお付き合いしているのは幼馴染です」
「…幼馴染?」

堂々と質問に答える拓海に記者たちの方が動揺している様子だった。
事務所はこの囲み取材を認めているのだろうか。
彼の発言を許したのだろうか。

不安は消えない。

「ええ、そうです。僕の大切な人です。ようやく手に入ったので一生大切にするつもりです」
「えっと…結婚を考えているのでしょうか」
「はい、来年までにはと考えています」

ざわつく会場に臆することなく淡々と答える彼はいつからか”弟”でも、”幼馴染”でもなく

立派な男性として私の目に映っていた。

「ファンの皆様のお陰で僕は活動出来ています。だからここでちゃんと僕の口から説明しようと思っていました。先に報道に出ているような女優のアンナさんとの関係は全くありません。ただ先日ネットで拡散された一般人女性と付き合っているのは本当です」
「すみません、その方とはどれくらいお付き合いを…?」
「付き合ったのは、数か月前からです。でも小さいころから一緒でずっと彼女のことを好きだったので長年の片思いが実ったというか」
「そう、ですか…」

あまりにも正直に答えるので、質問する人も戸惑っていたし私だってそうだ。
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