秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「ごめんね、気づかなくて」
「…いいよ。じゃあ問題だしていい?」
「問題?」

いいからとりあえずどいてほしい、とは言えず私は彼の言葉を反芻した。
拓海はゆっくりと私の下唇に親指を這わせる。
這わせる指も、視線も、表情も全部が色っぽい。そりゃ全国の女性が夢中になるわけだ。


「俺が芸能界に入ったのはなぜでしょう」
「え、っと…」
「答えられなかったらキスしていい?」
「え?!それは無理だよ、ダメ」
「なんで?今までずっと我慢してきたんだから、いいじゃん」
「…」
「答え当てたらしないから。ね?」

何だろう、熱でもあるのだろうか。
頭がくらくらする。拓海とキスなんて、そんなの絶対無理だよ。

でも、もう彼はその気らしくわたしは早くこの状況から解放されたいがために必死に頭の中で考えた。
芸能界に入った理由は何だったっけ?急に入ることを宣言されて気づいたら人気になっていた。

その理由を彼の口からきいたためしがない。

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