秘密に恋して～国民的スターから求愛されています～

普段なら知らないふりでいいのに、沙月の寂しそうな悲しそうな表情を見てしまったら黙ってはいられない。
別に彼女たちが悪いということではないのだけど、隣にいる沙月を悲しませたくなかった。

「え、拓海…？」

俯き、店内を出ようとする沙月の手を握った。
弾かれたように顔を上げて俺を見据える彼女はひどく驚いているようだ。

スタスタと、数メートルの距離にいる女の子たちへ近づく。
女子高生というには大人びていてでも20歳を超えているようにも見えない彼女たちはどことなく幼さを残した目を大きく見開く。
大学生だろうか。

「ごめんね、彼女とデート中なんだ」
「え、…す、すみません」

彼女というワードを強調して伝えて、「本物だ！」と黄色い声を上げる彼女たちに背を向け唖然としている沙月の手を握ったまま店内を出る。


「拓海！なんであんなこと…」
「だって本当のことだし」
「そうじゃなくて！バレてもいいの？」

不安げな顔を上げてそういった沙月に囁くように言った。

「どうして？もう公表してるし。それに来年までには籍を入れる予定なんだから堂々としていたらいい」
「…うん」

先ほどよりも嬉しそうに笑った彼女の手を強く握る。