秘密に恋して～国民的スターから求愛されています～
「お名前は…？」
「サヤと言います。すみません…急に」

おっとりとした口調でそう言った彼女は複雑そうな表情をしたまま続けた。

「同じ大学で…その、付き合っていて」
「はい」
「えっと…迷惑なのはわかっているのですが、忘れられなくて…確かこのあたりに住んでいたなって思って…マンション前で待っていたんです」
「あの…どうして私のこと知ってるんですか」
「彼の携帯の待ち受け、いつも知らない女性だったから…その人が本命なのかと感じていました。そうしたらマンションから見たことのある女性が見えて…つい…」

申し訳なさそうに語尾が消えていく彼女は本当に拓海のことが好きで何年も忘れられていなかったのだと感じた。

本当に付き合っていたのだろうか。確かに拓海は大学に通いながら仕事をしていた。それは、芸能界に拘っていない彼らしい選択だと思っていた。

「今、婚約したとニュースで見ました。あの…おめでとうございます。ただ、最後にどうしても彼に会いたくて」
「…はい」
「連絡先変えたのか電話もメールも拒否されているので、これ、よかったら彼に渡してください」
「…えっと、」
「お願いします！」

そう言って深く頭を下げると、丁寧に折られた紙を手渡してそのまま走り去っていった。


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