秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
…――


わかっている、わかっているけど。
モヤモヤするなぁ。拓海の元カノってあんな子だったんだ。
付き合ったことはないって言ってたけど、家に入れる間柄ならば…そうだったんじゃないかな。

あの紙には、電話番号が記入されていた。名前も一緒に。

―080…
―沙也です。一度連絡ください

沙也さんは見るからに清楚系だったし、拓海ってああいうのがタイプなんだと思うと少し胸がざわつく。
アンナさんだったらなんていうか人間離れしたスタイルに美貌を持ち合わせていて諦めもつきそうだけど、ああいうふわっとした可愛らしさのある一般の女性を見るとなぜか複雑だ。

拓海が帰宅して、そのメモを渡そうと思っていたのにタイミングを掴めずにいた。
だって、それを渡すときに経緯も話さなくてはいけないし、そうしたらあの人が元カノなのかとか詳しく聞かなくてはいけなくなるだろう。

「どうかした?」
「ううん。何も、ない」
「ふぅん」

食事も終わり、拓海が寝室に入ったのを視界に捉えるとそっと彼の後を追うように寝室へ入る。

彼は勉強用のデスクで何やら真剣な顔をしてノートパソコンに向かって何かをしていた。

「拓海?」
「あ、沙月」

私に気づくとすぐにそれを閉じて私に笑顔を向ける。
何をしていたのだろうか。
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