秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「…どうかした?何かあったの」
「あった…なんか、これ…渡してって」
「…え?」

こんな言葉足らずで伝わるはずもないのにパジャマのポケットからもらった紙を彼に差し出す。
何これ、と言いながらそれを受け取り中を見ても彼の表情は変わらない。

「えっと、何?これ」
「知らない女性から今日声掛けられたの。これ、拓海に渡してほしいって」
「俺に?」
「元カノだって」
「え?!」

訝しげにそれをじっと見つめながら、あっと声を出す。
思い出したかのように顔を上げて眉を顰める。
はぁ、と息を溢し、すぐにそれをゴミ箱に捨てる拓海に私の方が動揺した。

「ちょっと、それ…―」
「元カノじゃないよ。体の関係だけあった子」
「…え、」
「俺は付き合うなら結婚を考える、まぁつまり沙月しかいないんだけどそういう子じゃないと付き合わないよ。でも、大学時代は特に沙月に彼氏が出来たりして…辛かったから結構遊んでたんだよね。でも誰を抱いても満たされないからやめたんだ」

昔を思い出しているかのように視線を空に向け苦虫を嚙み潰したような顔をする。

「じゃあ、元カノじゃないの?」
「違うよ。何回か抱いたけど向こうだってセフレでいいって言ってたし。でも今思い返すと…そういう関係はよくないよね。本当にそう思うよ。沙也って名前を見ても思い出さないほどだけど彼女は違ったんだ」
「…じゃあ、会ってきたら?ちゃんと伝えた方がいいよ。向こうは付き合ってるって思ってたみたいだし…ちゃんと伝えようよ」
「え、それ沙月はいいの?俺なら嫌だけど」
「大丈夫だよ。沙也さんって人、結婚することは知ってたみたいだし」
「…」

考え込むように腕を組む彼。私は先ほど捨てられたメモをゴミ箱の中から取り出す。




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